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Ossan99

Day of pray for United States of America

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September 11, 2001 A.D. U.S attacked by Terrorist. 3,025 people killed, over 6,291 people wound. I against any kind of Terrorism. I hate any kind of Terrorist. Today is a day of pray for U.S.A.
I understand order is wrong. I must upload yesterday's blog, but it will require tons of photos and descriptions. Today is simple, just uploaded. I typed this doujin at 2006, I don't remember reason why. maybe Wizardry for Gameboy Color version was so good. I'm not typed this texts for 311, for myself only. I didn't know Type-Moon. Incidentally theme was "death and revive". You may or may not read. maybe your line-by-line translator will not works fine. No comical, No H scene included. I'm not recommend to read because quality is low and poor (^^;.

Spoiler:

「終りのまたその後」 From The Wizardry anecdote #1 "Suffering of the Queen".

ACT.I 前夜

 死人の肌の色。あるいは、死にゆく者の肌の色。
 リルガミンの城壁が、月に白く照らされ、そんな色あいで窓の外にそびえていた。
まるで眼下の町並を睥睨してるかのよう。あるいは、本当にそうしているのかも知れない。女王は、あのソーク スの双子の妹は、頭上はるかな天守からこの町並を眺め、何を思うのだろう。己の統治を乱した者が倒されたこ とによる安堵か、あるいは肉親の生死でさえも自由にならぬその身のままならぬさか。
 どちらにせよ、今の俺には関係がない。「ユーナの一行(パーティ)」の働きでニルダの杖の輝きが取りもど された今、城下はもとの平和と喧噪とを取り戻していた。
 そんな俺の無為な感慨をたしなめるかのように、背中に柔らかなものが押しつけられる。俺は窓に背を向け、 寝がえりをうった。
 フローマー・ヴェレッタは熟睡していた。もはやこんな狭い安部屋に泊る必要はないのだが、長年の習慣とい うのは恐ろしいもので、どうにも広い部屋は落着かない。とまれ、2人では密着せざるを得ない寝台で寝ること になる。
 背中まである濃い青の髪は、その華奢な首筋とむきだしの肩とを白く浮き上がらせていた。メイスだこのつい た指を伸ばした右手の上に、面長の顔を載せている。閉ざされた眼蓋の先の、長いまつ毛が優美な曲線を描く頬 に影を落し、肉薄の唇はわずかに開いて、安らかな息を漏らしていた。いつもならしなやかに張りつめている長 い耳は、今は弛緩して、呼吸に合わせてゆっくりと上下している。右目尻の下のやや大き目の黒子に、低いが筋 の通った鼻梁。見慣れた、というより自分のよりも良く知っている顔の細かな造作に、今更ながら俺は見とれた 。
 月明りの中でも、彼女は死人には見えなかった。艶やかに生気に満ちていた。

ACT.II 集合

 ユーナは約束の正午の鐘より大分前に来ていたらしい。黄金色というよりは純粋な白に近い金髪が、遠くから も良く見えた。そしてよくあることだが、例によっておかんむりらしかった。自分より頭3つは低い人影に向き なおり、肩をいからせ、腰に両手を当てている。風が彼女の背中のマントを揺らすと、その隙間から澄んだ銀色 の地金が輝いた。
「少しは見習ったらどう?」
 ベジテ産の丈夫な牛皮で造られた右の小手に紐を通しながら、フローマーが言った。片手でもきっちり縛れる ように、紐の片方を口に喰わえている。
「何を?」
「わかってるくせに」
 と、紐から口を離し、
「甲冑よ。ユーナはあんなにピカピカなのに、貴方のはそんな色じゃない」
 俺は自分の身体を見下ろした。薄青の陣羽織の下から、くすんだ鉛色が覗いている。全面に野薔薇の蔦をあし らった精巧な透かし彫りが施されているのだが、俺のは注意して観察しないとただの傷のようにし か見えない。
「磨いて丈夫になるんなら、いくらでも綺麗にしてやるさ」
「意志が強いのね」
 と言ったのは誉め言葉ではないのだろう。
「アロイの鎧(アロイプレートメイル)も台なしだわ」
 そう言いすてて、フローマーはすたすたと先を歩いていく。俺は苦笑して、その後を追った。
                 ○
「で、どっちが先に手を出したの?」
 ユーナのよく通る声は、野次馬の喧噪の中でもはっきりと聞こえた。城からはやや離れたこの区画は商業用地 に充てられており、この広場はその中心だ。いつもなら出店の店主と客の交渉や売り子の呼び声でうるさいほど なのに、妙に静まっている。ユーナの周りの一角だけ騒がしい。
「……そりゃ、もちろん、こいつさ」
 ユーナにねめつけられた2人のうち、背の低い方が答える。アルだ。ホビット特有の、ひどく収まりの悪い燃 えあがるようなオレンジ色の髪を、肩のあたりでばっさりと切っている。
 アルの足もとには、黒こげになったぼろ雑巾といったなりの物体が転がっている。時おりひくつく所を見ると 、死んではいないようだ。
(やはり……か)
フローマーは何も言わない。ただ、人垣の中央を見やり、肩をすくめた。
「わたしが聞いてるのは、貴方達のうち、どっちが先に手を出したかってことよ」
ユーナの尋問は続く。
「あたしよ」
「俺だ」
 アルが言うのと同時に、シレノが口を開いた。ズンダ劇場で良く聴くような、ノームの朗々とした声も、今は 心なしか沈んでいる。
「結構。上出来ね。お二人さん」
 ユーナの声音が一層きつくなる。人間にしては白い肌を紅潮させ、大きな眼をつりあげているさまは、中々迫 力がある。
「天下のリルガミンの往来で、たかだかスリ1匹に大炎(ラハリト)ぶちかます不届き者を捕まえてみれば、我 がパーティのメンツだとは。笑い話にもなりゃしないわ!」
 ユーナはかなり頭に来ているらしい。口調がべらんめえになっている。一般に、ロードというものはそれなり の品位や人格があるということになっているようだが、俺の知る限り、凶暴で融通のきかないクラスだ。もっと もこれは俺の知っているのがそうなだけで、大半の連中はもっとましなのかも知れないが。
「あげくに先に手をあげたのがどちらかと聞けば、たがいにかばいあう始末。見上げた同胞愛ね」
「だまってりゃ好き放題言いやがって」
 アルが反撃に出る。
「盗賊が、スリに遭って黙っていろというのか?たかがスリでもスリはスリだ。見逃したら末代までの笑いもん だ。”私はすられたことのある盗賊です”とでも言えってえの?」
「それなら」
すっとユーナの眼が細くなる。
「自分の足で捕まえたらいいでしょ」
「逃げ足が遅かったらスリは出来んだろう。気付いた時は追い付けるような距離じゃなかった」
 シレノがいささか撫然とした口調で答えた。
「それで、逃げられるくらいならいっそ呪文でと。そういうことね!?」
「……そうだ」
 寝ぐらを荒された剣龍(ブレイズ・ドラゴン)並みに爛々と光るユーナの眼を見つめ返して、シレノは言った 。もし、ユーナが剣龍なら、間違いなくこの瞬間に火(ブレス)を吐いていただろう。
 俺は内心シレノの勇気に喝采すると同時に、同情もした。間違いなく、ユーナは火を吐くだろう。大音量の罵 詈雑言という名の火を。
「一体、ここをどこだと思っているの!? あんたた……」
「リルガミンさ」
 声はユーナの背後から発せられた。ユーナが怒りに任せて振りむいた先に、俺は自分の鏡像を見る。フローマ に言わせれば、あっちのほうが少し精悍で、かなり知性的だという。大きなお世話だ。
「リルガミンさ。俺達が救った」
 シウはいつもの通り黒ずくめ。ラマズク鋼の兜の眼びさしを上げている。アロイの鎧を包む陣羽織、脚を覆う 鉄靴、左手にまとめて持った盾も矛も、御丁寧に闇色に塗り潰されている。
「遅刻よ。正午は過ぎたわ」
 話の腰を折られた苛立ちを含んだ声でユーナが言った。
 この騒ぎで気づかなかったが、カント寺院の正午を告げる鐘の、最後の余韻が消えようとしてい た。
「どうせすぐには出発しないだろうと思ってね。遠くからもリーダーの声は聞こえてたし」
 そう言ってシウは鈍い音と共に左手の荷物を地面に置く。ユーナの声量には定評がある。特に怒 った時には。
「何にせよ、リルガミン城下の治安を乱す輩を一人捕まえたんだろう?お手柄じゃないか」
「そんな問題じゃないの! シレノとアルが街中で魔法を……」
「シレノとアルが捕まえたのか?そりゃ凄い!ニルダの杖の力を奪還した後は、街中の治安維持か。見上げたも んだ」
大仰に手を広げて称えてみせる。シウの肩には女王から下賜されたシェブロンが光っている。
 野次馬の中にざわめきが走る。今、ここでちょっとした見世物になっている面々が、ニルダの杖の力の奪還パ ーティであることが野次馬の間に広まるにつれ、彼らの目つきもちょっとした賞賛めいたものに変 わってくる。
まるで現れる時期を見計っていたように、人ごみをかきわけつつ警護隊の一団が現れた。
 素早くフローマーが飛び出して、倒れたままのスリに左手をかざす。
「尽きぬ泉。汲めども汲めどもあふるる力。我が手伝いて広めよ生命」
 フローマーの「大癒(ディアルマ)」によって、半死人といったなりのスリは、半病人程度には回復した。や けどの跡も消えているが、焦げた服までは直しようがない。うめいて、半身を起こす。ホビットの ようだ。
「何事か?」
 警護隊の長らしき男が問うた。どうやら有難いことに人間のようだ。少なくとも、ドワーフよりは話が通じる 。
「スリを捕えました。その際、抵抗しましたので止むなく組打ちました」
 前に出たシウが丁寧な口調で言った。言いながら、背中で手を動かす。それを見たシレノはぶつぶつと何事か つぶやいている。
「そいつが、あたしの財布をすったんだよ」
 アルが大きな声でこう言って、とりかえした自分の財布を叩く。大きな声を出している。必要以 上に。
「男、本当なのか?」
 スリのホビットはようやく頭を上げた。その口が弱々しく開く。
「あの2人……が俺……に魔……法…」
今度は俺の番だ。フローマーの影に隠れるように人の輪から抜け出すと、半身を起こしたスリの、腰のやや上を 思いきり蹴り上げる。
「ぐっ」
 むせて、そいつは悶絶する。
「あとは御願いします」
 気絶したそいつを俺が立たせると、フローマーが半ば押し付けるように警護隊に引き渡す。
「ご苦労様です。事情はこやつの意識が回復次第聴取しますが、場合によってはそちらにも来て頂くことになる かもしれません」
 隊長が事務的な口調で言う。
「もちろんですわ。我々にできることでしたら何なりと」
フローマーが蕩けるような笑みを浮かべてこう言うと、隊長の顔がわずかに赤くなる。
「これからしばらく迷宮(した)に潜りますが、何かありましたら「冒険者の宿」に言付を」
 フローマーはにこやかにこう続けた。
「必要とあらば女王陛下の御前にて証言致します」
 シウが小声で隊長に告げると、男ははっと思ついた顔になる。人間のロード、エルフのサムライ2人、ホビッ トの盗族、エルフのビショップ、それに、ノームの魔術師。
「そ、それには及びません。良い収穫を」
「良い収穫を」
 警備隊が立ちさるのを見はからって、シレノは呪文を解く。
「石心(ボラツ)」の効果が切れたユーナは、すぐには身体の自由を取りもどせず、力無く尻餅をつく。もう少 し詠唱が進んでいたら完全に石化していたところだ。そうなったところで、フローマーが治療してくれるだけの ことだが。
俺たちは彼女が十分追いつける距離だけおいて歩きだした。これ以上ここで騒ぎを起こす訳にはい かない。
 案の定、回復したユーナは、街はずれまで火を吐き続けた。
              ○
「嫌なやり方ね。ニルダの杖の力の奪回をこんなことの言い訳に使うなんて!」
「ほかに八方丸く収める方法があったら教えてくれよ。警護隊に引っぱられず、騒ぎを収める方法 があるなら」
 ユーナの怒り心頭の抗議にも、シウの声は落着いている。
 城内で、正確には城壁の内側で魔法を使うことは犯罪である。許されているのは女王直属の魔法使い、つまり は宮廷魔術師とカント寺院の坊主共だけだ。それ以外は全て罰則の対象になる。万一人前で魔法を使おうものな ら、たちまち城内の治安を守る警備隊に捕縛され、よほどの事情-正当防衛など-が無い限りは罰をくらう。理由は簡単。強力過ぎるのだ。武器ならば取りあげれば良いが、魔法はそうはいかな い。
「それにしたって、私に「石心」までかけて!」
 ユーナの怒り矛先は、街中で魔法を使ったことから、自分に魔法をかけられたことへと移っていた。とはいえ 、自分のリーダーに告発されるぐらいなら、発見される危険を犯してでも「石心」を使うだろう。
「リーダーはあんただ。前衛の替えが欲しいのなら、そうすればいい」
 静かな口調でこう言うと、あっけに取られているユーナを置き去りに歩を進めた。
「言っとくけど、シウを替えたら、俺も抜けるぜ」
 硬直したままのユーナの背中にこう言って、俺はシウに続いた。フローマーも無言でうなずく。
「シレノもアルもそうするだろうな」
 振り返ってこう付け加えた。そのユーナの脇を、当のアルとシレノが無言のまま通り過ぎてゆく。ユーナの方 を見むきもしない。
迷宮への道は緩やかな下り坂になっている。そして、入り口の前にはかつて封印に使われていた大岩があり、道 からは直接入り口は見えない。その岩の陰で、俺達は待った。
やがて鉄靴が小石を踏む音がして、ユーナが姿を見せる。その表情は硬く、張り詰めている。怒りを飲み込んだ 表情。
「行こうか、リーダー」
何事もなかったように、シウが言った。しばしの沈黙。
「よし、前列、右からヴォイス、ユーナ、シウ。後列、アル、シレノス、フローマー。この隊形で 突入する」
何かを忘れまいとするかのように、早口でユーナは告げた。
 いい加減、うちのリーダーにも<中立>とつきあうすべに慣れて貰わねばなるまい。フローマーでも見習って 。

ACT.III 異界

 僅かばかり疲労を滲ませた溜息をひとつついて、ユーナは上級悪魔(グレーターデーモン)の頭蓋から剣を引 き抜く。カシナートの剣の、眼にもあざやかな白銀の刃身は、今や濁った泥水のような血にまみれている。その かたわらでは、自力で麻痺(パラライズ)から回復したシウが頭を振っている。俺はと言えば、アロイの鎧を突 き破った悪魔の、忌々しい爪から注がれた毒を抜いて貰っている。
「白の雪、赤の血。交じりて清めよ、紫の毒」
 フローマーが腫れ上がった俺の傷口に手を添ると、ひいやりとした感覚と共にじくじくした痛みが消えてゆく 。「解毒(ラツモフィス)」の詠唱の中、残りの2人は殺戮現場を漁っている。やがてアルが歓声と共に、魔物 どもの死体の間から平たい頑丈な箱を見つけだす。
「黙って。気が散る」
 シレノが話かけるのを手でさえぎって、アルは我々の最大の戦利品、宝箱に向きなおる。ちらと鍵穴をはすか いに見て、ベルトに狭んだピックを取り出す。
「テレポータか……」
 小さくつぶやいて、ピックを鍵穴に差しこむ。我々は遠くからそっと見ている。彼女の邪魔にならぬように。 頭上に灯された「永光」(ロミルワ)の青い光の中で、アルの小さな肩がぐっと上がる。そうして彼女は仕事を 始める。そして、その肩がすっと下がると、どうした訳かどんな魔物よりも確実にパーティを破滅させる罠はあ っさりと外れ、蝶番のきしむ音と共に魔物の遺産は我々のものになる。
「フロウ、見てくれる?」
 アルの声にフローマーは俺の腕から手を離し、そちらへと向かう。俺はそれを少しだけ残念に思いながら、ア ルの掲げた箱を覗きこむフローマーの横顔を観賞する。フロウはアルと二言三言言葉を交わし、対の大きな空色 の瞳で箱の中の物体を走査する。やがて彼女は箱の中に手を伸ばし、1本の剣を取り出す。剣にささやきかける ように何事か小声でつぶやきながら、なめらかな額に刃の腹を軽く当て瞑目する。
「風切の剣(ウィンドソード)……」
 こう言って「識別」した剣を床にそっと置く。次に取り出したのは古ぼけた杖だ。これは「大地の杖」だった 。他にはガングニールの槍、丈夫(ますらお)の鎧、支えの盾。大したものだ。魔法の品のなかでも一流品と言 って良い。
「……以上よ」
 総てのアイテムの鑑定を終えたフローマがこう言うと、もう数えることさえ飽いた、独特の雰囲気がパーティ を満たす。
 あえてそれに名前を付けるとすれば、それはちょっとした失望だった。
 富と名声。これらを両方手に入れてしまった者は不幸である。その後に残るものは何もない。亨楽的な生活( くらし)におぼれ、日々を過すにせよ、さらなる富や名誉を求めて邁進するにせよ。その先にあるのは空虚な飢 えだけだ。その程度の事で行きづまってしまう当人の資質に問題があると言うのならその通りだし、贅沢といえ ばこの上なく贅沢な話ではあるが。
 タイロッサムを倒し、ソークスを倒し、ニルダの杖の輝きを取り戻し、女王の信任を得、生涯かかっても使い きれぬほどの富を手に入れた先に待っていたのは、この空虚だった。贅沢三味の暮らしにはすぐ飽いた。城内の 貴族どもの、表面上は穏やかな、しかしその実は陰惨な権力闘争にもなじめなかった。結局、蛆虫の蠢くこの地 下迷宮に、俺達は戻って来た。自分達の手で、世に二つとない宝を手に入れるために。
ユーナは「聖なる鎧」。
アルは「盗族の単刀」。
フローマーは「聖なるフレイル」。
シレノスは「氷の指輪」。
シウと俺はもちろん「村正」。
いつしかそれが、俺達の喝きをいやす唯一の水となっていた。愚かなことではある。
「この階は掃討し尽くした。下に潜る」
 ユーナが消沈した雰囲気を吹きとばすかのように、稟とした声音で告げた。
 俺達は異次元6階に進んだ。何十度目かの。
 ひとつだけ感謝したいことがある。ソークスにせよタイロッサムにせよ、自らが亡んだ後も魔物の召換を維持 し続けてくれたことに。もちろん、彼等が守護する宝物にも。

ACT.IV 邂逅

「行くわよ」
 短く、ユーナが告げた。最深部とは言え、全ての部屋の配置は頭に入っている。これだけの回数潜り込めば、 嫌でも覚えるというもの。ドアもトラップも、「転移陣」の位置も。判らないのは中に潜んでいる魔物だけだ。 俺達を殺すことが出来るのも、魔物だけだ。そして宝物を持っているのも、魔物だけなのだ。
 もう呼吸も合わせずに、3人同時に扉を蹴りこんだ。もともと鍵のかかっていなかった扉は勢い 良く開く。
 踏み込み慣れたその部屋の、最奥の一角に彼等はいた。闇の中で、そこだけさらに暗い。周囲の闇が、輝いて いるよう。無数の赤い眼が剣呑な光を放っている。その中央のひと際大きな人影。身体が他より二回りほど大き いだけなのに、発する気は数十倍だ。「識別(ラテュマピック)」があっさりとその正体を告げる 。
 その名前が全員の脳裡に染みこむまで、少し時間がかかった。生死を分ける瞬間にもかかわらず 。
「ヴァンパイア……ロード」
 暗い影を睨んだまま、ユーナがつぶやく。
「不浄の主が、こんなところに……」
 フローマーの声は怒りと驚きのあまり、かすれていた。敵はヴァンパイア・ロードにヴァンパイ アが9体。
 不死者(アンデッド)は彼等の神への冒涜であるばかりではなく、<善>からみても許されない存在である。 中でも、「不浄の主」、「不死者の王」として知られるヴァンパイア・ロードは、最も忌むべきものとしてその 撃滅が叫ばれて久しい。しかしこの存在自体、出現が伝説的に稀な上、ひとたび現れればその圧倒的な力で対峙 したパーティを粉砕し、生きのびた僅かな者の混乱した証言がさらなる伝説を生み出すという状態で、おおよそ の戦闘力さえ判っていない。
 まるで申しあわせたように、同時にフローマーとユーナが隊列から飛びだし、不死者の王に向かって行く。未 知の敵への恐怖よりも、自らに課した教義への忠誠が勝ったのであろう。しかしこれでは勇み足だ。パーティと しての戦力を発揮できない。
「フロウ! 駄目だ! 離れるな!」
 伸ばした手の先をフローマーはすりぬけていく。ユーナは間一髪、シウが捕まえた。フローマーはそのまま不 死者の群に突きすすむ。俺はその後を追った。
「無茶だ! 奴については何も判っていないんだぞ! お前一人でどうする気だ!?」
「手は、あるわ。どんなに強くても、不死者なら!」
 全速で駆けながら、彼女は肩ごしにどなった。フルプレートの俺よりは数段足が速い。もう、奴らは眼の前だ 。
 フローマーはミスリル銀のメイスをよこざまに払った。主を守ろうと爪をかざした吸血鬼が一体、うけとめた 腕ごと頭蓋を割られて倒れる。白兵戦に不慣れと言われるビショップでも、彼女くらいのレベルになれば、駆け だしの戦士などよりよほど強い。次の一体の攻撃は身を沈めて翻し、下から立ち上がりざま、不死者の王へ下か らメイスを振りあげた。死角からの一撃になった。
 水面を掌で打つ音がした。フローマーの渾身の一撃は、不死者の王の片手であっさり受けとめられた。奴の右 手が文字どおり腕3つ分ほども伸びて、メイスが自分に届くはるか手前でフローマーの手首を掴ん でいる。
 剃刀で切つけられた傷のような笑みをうかべ、不死者の王は手を引よせる。いくら小柄とはいえ、完全装備の フローマーはそれなりの重量がある。それを、まるで空の杯を扱うがごとく、不死者の王は片手で軽々と持ちあ げる。右手一本で宙づりにされたフローマーは、自由な左手で振りほどこうともがくが、たちまち不死者の王に 引きよせられてしまう。左手の、ノリト産の樫にベジテ牛皮を貼りつけた小盾が、空しく落ちた。
「フロウ!」
 叫んで飛びだした途端。
 後頭部に火の点いたような感覚。前に進む代りに、横っ飛びに跳ぶ。反射的に頭を低くする。
 さっきまで俺の頭があった空間を、猛烈な一撃が薙いでいった。暗い玄室にすっかり溶けこんだ黒裳束が常人 ならざる速度で跳ね、再び暗がりに消えた。
(ニンジャか……)
 それもかなりの手練。おそらく、ハイマスターと呼ばれる危険極まりないクラスだろう。「識別」の探知範囲 外にいたのだ。
「まだ、殺すな。興がそがれる」
 ヴァンパイア・ロードが闇に潜むハイマスターに言った。ヴァンパイアが5体ほど、両手を広げて行く手をさ えぎる。構わず、飛びこもうとしたところで、空中のフローマーと眼があった。
「ヴォイス……」
 とだけ言って、顔をこちらに向けた。それは死にゆく覚悟を決めた者の顔でも、死の恐怖におびえた者の顔で もなかった。
 戦士の顔であった。その眼が、下がれと告げている。
 フローマーが何を考えているか判らないが、何の根拠もなく今のような態度は取らない。本当に、策があるの だろう。
 何も言わずに、数歩下がった。ヴァンパイア共はざわめきながらも追ってはこない。無論、機会があれば、い つでも飛び込む気でいた。ハイマスターの存在は気がかりだが、フローマーをこれ以上死なせるぐらいなら、喜 んでニンジャの相手になろう。
「それで、次はどうしてくれるおつもりかな?」
 フローマーを宙に釣り下げたまま、不死者の王が尋ねる。わずかに揺れただけでも、すでに右手を自重によっ て限界まで伸ばされたフローマーが苦悶のうめきを漏らす。その手からメイスが外れて、乾いた床に鈍い音を立 てて落ちる。
「そう……ね。とりあえず、この手を離してもらえると有難いんだけど」
 意外と落着いた口調で、フローマーが言った。
「それは失礼」
 不死者の王はあっさりと手を離した。そのままフローマーは地面に落ちる、と思いきや、今度は左手首を空中 で掴まえられた。
「ぎゃうっ」
 一瞬フローマーの身体が左手を上に真一文字に伸び、骨が外れるような鈍い音がした。
「良い声だ。もっと聞かせてくれ」
 ヴァンパイアは単に儀牲者の血を吸うだけではない。苦痛、絶望、悲しみ。そういった負の感情をも食らう。 その上位種であるヴァンパイア・ロードも同じ習性を持っているようだ。そしておそらくは、もっと貪欲に容赦 なく食らうのであろう。
「フロウ!」
「来る……な」
 油汗を浮かべながらも、なおもフローマーは助力を拒んだ。俺は進みかけた足を止めた。
「そうそう。そこで見学していたまえ。この娘が死ぬところを」
 これ見よがしに、ヴァンパイア・ロードはフラーマの身体をまさぐる。頬、首すじ、肩に爪の異様に尖った指 をはわせていく。フラーマーはうつむいて、この屈辱に耐えている。そしてヴァンパイア・ロードはフローマー の胸の真中で手を止めた。びくんとフローマーの身体が小さく跳ねる。首から下げた<善>の聖印。並の吸血鬼 ならば、触れただけで酷い火傷をもたらすそれをあっさりと掴み、おもいきり引く。鎖がちぎれ、突然の痛みに フローマーは小さな悲鳴を上げる。聖印を握りしめたヴァンパイア・ロードの拳から、薄く煙が上がっている。 程度の差こそあれ、やはり打撃は受けるものらしい。その拳に力が込められていく。砕ける音。ヴァンパイア・ ロードは拳を開く。乾いた音と共に、聖印だったもののかけらが落ちた。取りまきの吸血鬼どもが、称賛の声を あげる。フローマーは絶望したかのように眼を閉ざす。
「お前の心臓は、どんな色をしているだろう? 赤か薄紅か? それとも紫か?」
 こう言って、ヴァンパイア・ロードは指先に力を込める。鋭い爪に、薄地の陣羽織はあっさりと裂け、エルフ 銀の鎖かたびらが覗く。
「この鼓動も、もうすぐ私のものだ」
 手のひら全体が、心臓の上で深く沈みこむ。と、その手にフローマーの右手が重なって。ひきはがすと思いき や、自ら強く押しあてた。
「生きとし生けるものの鼓動。音大気に満ちて、生命の流れつむぐ……」
 うなだれていたフローマーの口から、小さく、だがしっかりと呪文が流れだす。
 ヴァンパイア・ロードの顔から、余裕の笑みが消えた。びくんと、その身体が硬直する。慌てて、フローマー の胸から手を外そうとするが、身体の自由が効かなくなっている。フローマーはヴァンパイア・ロードのいまし めから逃れる。身のこなしも軽く地面に降りたつと、そのまま一歩も動かずに痛めた左手も使って、ヴァンパイ ア・ロードの手のひらをさらに強く自らの胸に押し当てた。
「貴様!」
「生は大地。理(ことわり)に依りて、すみずみまで満たす」
「解呪(ディスペル)だとっ!」
 ヴァンパイア・ロードがなりふり構わぬそぶりで叫ぶ。たとえどんな高位であっても、不死者は自然法則たる 「生」と「死」その両方に反していることに変わりはない。そしてそのことを自らの魂に認識させ、不死者たら しめていた呪文や呪いを破壊して、自然法則の中にその存在を返すのが解呪である。当然、自然法則の中では、 その身体は本来の年月を取りもどし、たちまちのうちに崩壊、消滅する。そして、「生」そのものの現れのひと つである鼓動を介した解呪は、自ら望んで不死者となったヴァンパイアの魂にさえ、己が誤ちを強く訴えるのだ ろう。
「曰く空の彼方」
「がっ……はっ……」
 ヴァンパイア・ロードが膝をつく。フローマーの胸に片手を押しあてられたまま。
「曰く土の奥深く」
「ぐぶっ……」
 ヴァンパイア・ロードはさらによつんばいになって、もだえ苦しむ。いつのまにか艶やかな黒髪が灰色になっ ている。まわりのヴァンパイア共も動けない。うかつに近ずけば自分も「解呪」されてしまう。
「曰く大洋の遠く」
 ヴァンパイア・ロードはもはや声ひとつ上られない。髪はいまや真白で、それさえもずるずると抜け落る。肌 はかさかさに乾いて、紙のようだ。しわだらけの顔の、落ち窪んだ眼窩の中の眼だけが、異様な光を放っている 。一瞬のうちに、数十年の月日が流れたよう。
「水流るるごとく、火燃ゆるごとく。還りきたれ、還りきたれ」
 ごそっと髪が抜けて。しかしなおもフローマーの胸から手を離そうと、弱々しくもがく。爪が鎖かたびらに食 いこんで。
「迷いし……」
 フローマーが「解呪」の最後の一言を終える前に、ヴァンパイア・ロードの爪が音もなく伸びた。それはあっ さりフローマーの鎧を貫通し、彼女の背中から血をまとったきっ先を突きだした。
「かふっ」
 フローマーの口から、鮮血がこぼれ出る。ヴァンパイア・ロードの手が胸から外れた。フローマーの身体がゆ っくりと宙に浮く。片手の爪だけでその身体をささえ持ちあげているのだ。
「いやはや、全く……もって、大したものだ。お嬢さん」
 いくらか威厳を取りもどした声音でヴァンパイア・ロードが言った。
「ここまで追いつめられたのは久かたぶりだ。200年か、300年ぶりか……忘れてしまったがな。それほど までに私が憎いか? <善>のビショップよ」
 フローマーは答えられない。いや、答えない。血がにじむほどに唇を噛んでいる。苦痛の叫びはヴァンパイア ・ロードに力を与えるだけだ。爪は器用に急所を外している。両肩、両脚、脇腹。その爪が動いた。傷口をかき まわすように。フローマーの食いしばった歯の間から、悲鳴が漏れる。
ヴァンパイア・ロードの姿が元に戻っていく。髪も肌も、元の色つやを取りもどしつつある。フローマーの血を 、苦痛から生じる負の感情を吸いとって。
 たまらず飛びだした俺に吸血鬼どもが壁をつくる。
「どけ」
 行く手を遮る1体に矛を打ち落ろす。袈裟に切り下ろすと、そいつは驚愕に顔を引きつらせたまま、一瞬で灰 と化す。横ざまから爪を伸ばしたもう一体の腕を切り落とし、柄先で背後に回った一体の腹を突いた。むせて膝 をつくそいつの首を刎ね、片腕を失ってのたうつ一体の胴を串ざしにした瞬間。
 頭を何かがかすめた。衝撃で視野が暗くなる。その打撃に逆らわず、大きく後ろに転げたものの、身体が動か ない。ハイマスターの一撃。
「まだ殺すなよ。そいつの、絶望が欲しい」
 フローマーを爪で宙づりにしたまま、ヴァンパイア・ロードが下命する。
「恨むが良い。それこそ我が望み。では、返してもらおう」
 フローマーから突き出ていた爪が戻る。激痛に、びくりとフローマーの身体が硬直する。支えを失って落下す る先に、ヴァンパイアの手が待っている。そしてつい先刻まで無理矢理押しあてられていたフローマーの胸の真 中に爪先を向ける。
「私の力を」
 恩寵を授けるような笑み。
「止めろ!」
 俺の絶叫も空しく、ヴァンパイア・ロードの右手が、フローマーの胸に突き立つ。
 液体のこぼれる音と共に、俺の視野の半分が赤く染まった。
一瞬でフローマの身体は宙にはじき飛ばされ、そのままひどく湿った音と共に後方の壁に叩きつけ られる。
「フロウ!!」
 濡れたものを引きずる音を立てながら、彼女の身体は滑り落ちていく。壁に赤黒い線を引いて。
 陣羽織の胸が大きく破れ、エルフ銀の鎖かたびらが血にまみれていた。しかし、その真ん中に新しくぱっくり と開いた傷口からは、もう血は流れていない。
「悪くはない味だ。お嬢さん」
 すっかり元の容姿を取り戻したヴァンパイア・ロードが、歌うように言った。右手に握り拳大の何かを持ち、 杯を空けるかのようにそこからこぼれる液体を飲みほしている。
 それがフローマーの心臓であると気付くのに、ほとんど時間はかからなかった。肋骨を貫き、心臓を直接掴む と同時に体ごと思いきり突いて、その反動で胸腔から引きぬいたのであろう。
「色もまた申し分ない。綺麗な……」
 フローマーの飛び出さんばかりに見開かれた両眼を、身体が落ちるのに合わせるかのように目蓋がゆっくりと 閉ざしていく。
「……朱色だ」
 フローマーの遠い空色の瞳がわずかに動いて、俺を見た。血を吐いた唇がかすかに震え、言葉をつむごうとす る。しかし漏れてきたのは悲しげなうめき一つ。やがて目蓋がその眼を完全に閉ざすと、糸が切れたように身体 が地に落ちた。もう、痙攣ひとつしなかった。

ACT.V 対決

「あああああああ」
 最後にフローマーが死んだのは何時だったろう?
「あああああああ」
マイルフィックか?それともアークデーモンか?タタールか?
「あああああああ」
マイルフィックには首をはねられた。首の鎧を強化したら、アークデーモンに鎧の隙間から心臓を貫かれた。タ タールには鎖骨を折られ、その骨が肺を破って……。
「あああああああ」
 いつも、俺が連れて帰った。蘇生の失敗におびえながら。2度と目覚めないのではないという不安を押し殺し ながら。朝霧にけぶるカント寺院の「全蘇生(カドルト)」の詠唱。重くるしく、寺院のドームに反響していた 。仏頂面の神官。奴らが考えるのは金のことばかり。それでも祈った。神を信じない俺でも、奴らの神に祈った 。事務的に結果が伝えられる。まだ意識は戻らなくて、それでも脈があって暖かく、胸が規則正し く上下して。
「あああああああ」
何だこの声は? うるさ……
 脳髄を揺るがす衝撃と共に、意識が一瞬遠のく。耳ざわりな声が不意に止んだ。
 顔を上げると、シウが逆手に矛を構えている。柄で頭を思いきり殴られたらしい。いつの間にか、パーティは 戦闘隊形を整えている。すぐ後を追ってきたのであろう。
「しっかりしろ。こいつ相手に前衛が一人でも倒れたら全滅だ」
 ようやくこの耳ざわりな絶叫は、自分であげていたことに気がついた。
「彼女も助からんぞ」
 シウが彼女を指した。
 「永光」の、青がとても強い光の中でもフローマーの血は赤いまま。
 わずかに開いた唇の端からこぼれる鮮血。総ての感覚を剥奪された表情。固く閉じた両眼。死んだ顔。投げ出 された両手。その間の、朱に染めかえられた胸。心臓をえぐりとられた黒い穴。ところどころ紫に変色した長い 髪。血を失った肌が異様に白い。まるで月あかりに照らされたリルガミンの城壁のよう…。安宿の窓から覗いて いた……。
 俺は視線を彼女からもぎ離した。全ては、このあとだ。ぐいと小手で片眼をふさいでいた彼女の血をぬぐった 。前より、よく見えるようになった。
「ごめんなさい。私の所為だわ……」
 消え入りそうな声でユーナが謝った。シウに止められていなければ、ユーナも同じ目にあっていたのかも知れ ない。
「誰のせいでもない。誰のせいでもいい。あいつを倒そう。そして帰ろう。それだけでいい」
それも出来るだけ早く。
「そう……ね」
「懺悔は、済んだのかね?」
 ヴァンパイア・ロードの声に、ユーナはきっと顔を上げた。
 性別があるのならば、おそらく男のそれだろうが、わずかに笑みを浮かべた不死者の王の顔は、俺でさえもぞ くりとするほど官能的だった。自然の摂理をあざけり、背徳の喜びに満ちた生でも死でもない、無限の刻を己の 欲するままに過ごす喜び。その快楽が、このような表情を生みだすのだろう。
 全身の毛を逆立たせて、ユーナが身を震わせた。純粋な怒りか、それとも己の身内に起こったある種の感情を 押し殺すためか。
「噴怒の丘。激情の朝。眼射る光。心焼かれるとも、主は変わらじ……」
 ユーナが盾を掲げ、押し殺した声で僧侶系最強の攻撃呪文を唱えはじめる。不死者の王は驚いたように片眉を 上げたが、呪文の正体に気づいた途端、つまらなそうに肩をすくめた。ユーナの端正な横顔が怒りに赤く染まる 。
「空蝉(うつせみ)の山。その殻を砕けども、身には届かず。枯れ枝のごとくもろく、霞のごとくはかなく、さ れど貫くことあたわず……」
 わずかに遅れて、アルが耐魔結界の詠唱を開始した。不死の王相手にヘヴィクロスボウでは歯が立つ筈もない 。元魔術師のアルは、回数は限られるが、魔法を使える。それが売りの一つでもある。
「凶(まが)つ龍、確かに舞えども、主は変わらじ。山の頂、海底(みなそこ)へ転げども、主は変わらじ…… 」
呪文が編み上がるにつれ、ユーナの声に、より高く低く、別の声が唱和する。彼女の守護神、そのごく一部なが ら強大な力が、かび臭い玄室を満たしていく。しかし何かが足りない。ユーナのマバリコ、シレノのコルツ。そ うだ。アルのいつものやつ、それからフローマーの「重盾(バマツ)」。テノールとアルトが重な って。
 俺は振り向かなかった。そのまま、地を蹴って走った。不死者の王に向けて。盾を構え、魔騙しの矛(ファウ ストハルバード)を向ける。いつの間にかシウが脇を固める位置についている。食いしばった歯の間から息を吐 いて、シウの矛が一閃した。生き残りのヴァンパイアの一体の胴が綺麗に上下に断たれる。下半身に続いて、上 半身が床に落ち、灰と化す。
「奴は間合いが長いぞ」
「わかってる」
 残る吸血鬼は4体。
「漆黒の王蛇。真紅の孔雀。我夢も見ず、彼も見なじ……」
 背後からの大音声に、ぞわりと不死者の取りまきがざわめく。ユーナの呪文も十分に強力だが、シレノの朗々 たる「核撃(ティルトウェイト)」の呪声は、一瞬で吸血鬼共を恐慌に陥としいれた。魔術系最強、人の子の手 に入れた最大の攻撃を、アルは放とうとしていた。おっとり刀で、吸血鬼も耐魔障壁を唱えはじめ る。
 その吸血鬼の列に、俺とシウは突っこむ。左はじの一体が早口で呪文を唱える。その無防備な頭部に向けて矛 を向ける。そいつはにやりと笑ったようだった。
「踊る魔弾。砕けし鎧。消えし前に敵を貫け」
 吸血鬼が右手を伸ばすと、そこからオレンジの閃光が放たれる。俺はかわしもせず、まっすぐに矛を突き出す 。シレノの張った結界が、あっさりと「ツザリク」をはじく。ヴァンパイアの顔の真中に、深々と刃が刺さり、 後頭部から血をまとったきっ先が出た途端、そいつは灰となって崩れ去る。
「見くびるなよ」
 言いつつ次の一体に向けて横なぐりに払う。そいつは宙に飛んで、一撃から逃れた。しかし、これで道は開け た。シウはというと、やはり一体を葬り、一体に手傷を負わせて退けている。
「夢もまた夢。総てはゆきゆきて、露と消えん。総ては滅びて、ちりと化さん……」
 アルの詠唱が進むにつれ、今度は魔力の塊が、対峙する2つの群の間に生じ、膨らんでいく。にもかかわらず 、不死者の王は悠然とたたずんでいる。
「久方ぶりに、面白そうな連中だ」
 ヴァンパイア・ロードは口の端を歪めた笑みを絶やさぬまま、つぶやく。衣擦れの音と共にマントをひるがえ す。
「遊んでやろう……」
 退屈。そうだ、この感覚は退屈だ。俺達と、ある意味同じ。また、ある意味決定的に違う。
「希望の夕(ゆうな)、絶望の夜。さかしまの雷(いかずち)、地を清め打ち砕かん」
 そして、ユーナは今や神との一体感に恍惚とした表情で、「神罰(マバリコ)」の最後の一節を唱え終えた。 その声は、もはやユーナ自身のものではなくなっていた。
 ユーナを始点に、白色の電光が放たれる。障壁を貫いた電光に、数体の吸血鬼が直撃を受けて、消し炭と化す 。と、電光の着弾と同時にふわりと黒い影が宙に浮いた。ハイマスターは自らの力に加え、電光の衝撃を利用し て跳んだのだ。
ユーナは詠唱を終えたまま、動かない。その横顔は陶然として、白昼夢に酔っているかのよう。その無防備な首 筋めがけ、ハイマスターの手刀が打ちおろされる。
 ユーナは一瞥(べつ)さえしなかった。最後の電光がユーナの胸元から伸びて、ハイマスターの頭部は一瞬で 蒸発した。血まみれの肉塊と化したハイマスターの身体が、空中で回転した後湿った音を立てて石 疊に落ちた。
 そしてヴァンパイア・ロードは毛ひとつ乱すことなく立っている。完全に抵抗したようだ。陶酔から醒めたユ ーナが驚愕に眼を見開く。
「もはや夢なく、力なく、総ての希望を打ち破らん。肉は溶け、骨は砕けて、跡(しるし)にさえも残らじ…… 」
 ぱちぱちと空電の音を立てて、アルの魔力の塊が膨張する。その表面は油流しのようにあらゆる色彩が浮かん では消え、輝く。
(アルのが来るぞ。一撃で離れる)
(応)
 左右から走り込みざま、一撃を放つ。2人同時に。俺は腹を、シウは胸を狙った。青白い矢が走った、と思っ た途端、俺の身体は宙に舞っていた。ヴァンパイア・ロードは両手を伸ばして、矛の柄ごと俺を投げとばしたの だ。俺はさかさになったまま、盾の裏へ手を滑らす。小さな止め具ごとそいつを引きちぎり、投げた。ニンジャ の使う小さな金属片。星形のそれはヴァンパイア・ロードの無防備な首に突きささった。
「貴様!」
 不死者の王が吠える。
 手裏剣。ニンジャの究極の武器。これをめぐって、かなりの数のニンジャが互いに争い、生命を落としたとい う。とはいえ、ニンジャのいない我々には意味がない。<悪>の知りあいはそう多くない上、ニンジャとなると 皆無。もとより金にも困っていない。結局、最初にその宝箱を発見した俺が預かることになった。村正を見付け たニンジャと交換しよう、などと夢想したりもした。たとえ使いこなせなくとも、投げることは出来る。最高に 贅沢な使い捨て。相手がこいつならば惜しくはない。ましてそれが、フローマーの仇ならば。
 ヴァンパイア・ロードが手裏剣に手を伸ばした瞬間、アルの呪文が完成した。膨らんだ魔力の塊は一瞬で消え 、次の瞬間、ヴァンパイア・ロードの頭上で炸裂した。同時に景色が反転し、俺は背中から床に叩きつけられた 。衝撃にむせる。苦いものが口中にこみ上げてくる。
「がああああああっ」
 魔力の炎の中心で、不死者の王は灼かれていた。手裏剣に気を取られ、抵抗(レジスト)に失敗したのであろ う。深紅の瞳が、炎の中で苦痛に歪んでいる。やがて「核撃」は、黄色からオレンジ色、朱色から最後に眼を射 る白色の炎となり、不意に消えた。
 周囲からはまだ猛然と煙が上がっている。その中央に、不死者の王は立っていた。さすがに無傷というわけに はいかず、まとっていた黒のマントは大半が燃え尽きて、その下のまがまがしい意匠の鎧が覗いている。髪ば焦 げて、顔の半ばが焼けただれていた。
「貴様ら……」
 血色の瞳がねめつける。ようやく、本気になってくれたようだ。生き残っている敵は奴一人。最後にして、最 強の一人。
「拒絶の背中。沈黙の海。氷の断崖。全ての声枯れ、心奮わず……」
 今度はアルが「禁呪(バコルツ)」の詠唱を始める。続いて、シレノがもう一度の「核撃」。
 それらを背後に聞きながら、俺とシウは不死者へと向かう。さっき打った背中が一足ごとに痛む 。
「無駄だ!」
 そう叫んで、ヴァンパイア・ロードは両手を伸ばす。
(そうとも、無駄だ)
 走りながら、右手を思いきり振りかぶる。奴の腕の届くまえに、そのまま右手を振りおろす。
(これまでの苦労が)
 不死者の王の左手が、投げつけられた矛をあっさりとはじく。遠目にも折れ曲がったのが判った。そのまま止 まらずに、今度は口を動かす。あの矛を手に入れるまでの経緯を、極力意識しないようにしながら 。
「踊る魔弾。砕ける鎧……」
 盾も捨て、身軽になって最後の数歩手前で地面を蹴る。上に大きく跳んだ俺を見あげるヴァンパイア・ロード の顔は、怒りで引きつっている。
「子供騙しを!」
 矛をはじいた左手が、空中の俺に一撃を加えようとこちらに伸びる。同時に右手は、反対側のシウに向けられ ている。
 ふわと金の髪の塊が、下から浮かび上がった。
「何?」
 カシナートの剣が、不死者の王の胴を斜めに薙いだ。鎧に亀裂が走り、血がしぶく。
「私を、忘れていたようね!」
 ユーナは一撃してすぐに引いた。そのまま、二撃目を加えるべく身がまえる。
「ぐぅっ!」
 口から血を吐きながらも、ヴァンパイア・ロードはシウの一撃を右手で受けとめる。さすがに、投げとばす余 裕はない。わずかに態勢が崩れたものの、左手は落下する俺を捕え続けている。爪が、ゆっくりと伸び始めたの が見えた。
「消えし前に……」
 奴目掛けて落下しながら、俺は呪文を続けた。
「小賢しい!」
 手が、フローマーの心臓を掴み出した手が、俺の鎧をも貫く。打撃そのものを利用して身をひねるが、かわし きれない。
 それは衝撃だった。痛みではなく、純粋な。
 俺の心臓をえぐろうとした奴の手は、わずかにそれた。胸を斜めに貫きつつ、左肩ごと俺の左腕をちぎり取っ た。続いてした鈍い音は、腕が篭手ごと落ちた音だろう。
「敵を……」
 機械的に呪文をつむぐ。ただそれだけだ。そうさせてくれ。
「たかが定命(モータル)にぃ!」
 不死者の王が吠える。
 シウは魔騙しの矛で奴の右腕を抑え続けている。それを狙って、ユーナがもう一撃を見舞う。
 奴の蹴りが、ユーナの脇腹をえぐった。ぐっとうめいて、ユーナがよろめく。それでも、ユーナのカシナート は、ざっくりと奴の右腕に食いこむ。
 血と身体のバランスが、即座に失われたのが判る。ここで足が床につくのを感じたが、自分の体重さえ支えら れそうにない。奴の方へ倒れ込みながら、右手を伸ばす。しかし絶望的に遅い。手が、自分のものではないよう だ。
「砕けよ」
 不死者の王は一瞬で「剃嵐(バリコ)」を完成させた。アルの「呪禁」を貫いて、後衛の2人を薙ぎ倒す。失 った左肩から、ずしりと苦痛が差しこんで来る。衝撃が、苦痛に代わりつつある。まずい。
「亡びよ」
 逆上した不死者の王が、呪文を連発する。今度は「致死(バディ)」だ。半身を起こしかけたシレノが、再び 突っ伏して動かなくなる。彼の「核撃」は、もう発動しない。
 感覚を失いつつある耳にも、アルの悲鳴がはっきりと聞こえた。
 そして。
「燃えよ」
 「神罰」で焼かれることより辛いことがあるとすれば、それは、自分の無力さを見せ付けられつつ、仲間を殺 されることなどが良い例だろう。指数本分の距離、その距離が無限にも思われて。
 シウとユーナがその電光に弾き飛ばされるのが、視野の片隅に見えた。その一瞬後に、光が視界をふさぐ。と っさに眼を閉じたものの、左眼に文字通り焼けるような激痛が走る。身体全体をとげだらけの針金でこすられた かのよう。鎧は電撃までは守ってはくれない。俺は飛ばされなかった。奴の左腕がまだ身体に食いこんだままだ 。
 嘔吐感と共に肺の奥から熱いものが込みあげてくる。息が詰まり、ついで血が口と鼻から溢れる 。
(あと少……し……)
 死ぬのは、そのあとからでも遅くはない。血を吐くと、かろうじて息が続いた。
奴がようやく、左腕にひっかかったままの俺に気付く。奴の中では、俺はもう終わった存在なのだろう。あなが ち、外れているとも言いがたいが。
「お前の絶望は、美味いな」
 不死者の王はにやりと、右半分焼けただれた顔で笑う。左肩に凍りついたような感覚。力が吸い取られるのが わかった。ユーナに付けられた、奴の右腕の傷が塞がっていく。俺も精一杯の笑顔で応えたが、もう顔筋さえ動 かなくなりつつある。左眼も、もう開かない。早く、口が動かなくなる前に。
「もっと喰わせてもら……」
 言いかけた奴のまともな側の顔に、ついに手が届く。かろうじて手のひらが不死者の王の顔に貼りついた。一 瞬わけがわからず、唖然とした奴の顔を見て、無性におかしくなる。声に出して笑いたかったが、舌がひきつっ てしまっている。
「貴様ぁ!」
 ようやく、激怒の表情。これを待っていたのだ。奴の抗魔力が下がる一瞬。
「…つら……ぬ…け」
 口から、言葉と一緒に血もこぼれ出た。
 唱えられえた事自体奇跡的だが、効果はごく小さい。
 思った以上に間抜けな音がした。
 奴の焼けただれた右半面の中で、眼が大きく見開かれている。もう手の重ささえ支えられず、俺の手が奴の顔 から滑り落ちた。
 現れた左半面は、反対側とつりあいをとるかのように、眼が大きく開いている。良く見ると、その眼窩の中に は眼球はなく、眼と同じ大きさの穴が開いているのがわかる。そこから背後の壁が見えた。根が張っていたかの ように立っていた奴の身体が、不意に傾ぐ。
 そこで意識が一瞬で消えた。最後に考えたことは、右側から落ちること。左から落ちるのは、どうにもまずい 気がした。何故まずいのかさえ、もう判らなくなっていたが。
               ○
「……その水面(みなも)揺すりて、流るる光。この手揺すりて、あふれよ血魂」
 「全癒(マディ)」を受けることは、必ずしも快適とは限らない。切れた血管や筋肉、腱や神経を強制的に継 ぎあわされ、失った血や組織を再生させることが、疲労となって残るようだ。身体ではなく、精神 に。
 眼を開けて、最初に見えたのは、こちらを見おろす女の顔だった。
(……フロウ?)
 尖ったおとがいはフローマーに良く似ているが、唇はもっと豊かだ。濃い緑の眼は大きいが、フロウほどでは ない。さらりとした金髪が、はりつめた顔を縁取っている。その頬をひとすじの汗がつたう。いずれにせよ、決 して悪い眺めではない。その唇が動く。
「具合は?」
 ようやく、その顔がユーナだと思い出す。
「呪文は、完璧だよ」
 そう答えて、俺は半身を起こした。
「左腕は、まだつきたてだから、無理しないようにね」
「……わかった」
 そして、もっと大事なことも思い出した。
「奴は?」
 ユーナは無言で下を指さす。俺達は薄く積もる灰の上にいた。人型の。
「貴方の一撃のあと、そのまま灰化したの」
 手裏剣が、灰の山の上に忘れられたように落ちていた。これまでの戦闘が嘘のように、傷ひとつない。そのか たわらに、真紅の肉塊が落ちている。出来るだけそっと、両手で拾いあげる。
 立ち上がって、壁際まで向かう。ようやく、一番大切なことを思い出した。
 フローマーは最後に見たままにその身を横たえていた。呪文の爆風も、それ以上彼女を傷つけることはなかっ たようだ。
 俺は床に両膝をついて、その上にフローマーの頭を乗せた。両眼を閉ざした、安らかな寝顔のような、それで いて根本的な何かを失ってしまった顔。細い顎が上がって、白い喉元を見せている。その真中を横切るごく細い 、しかし決して途切れることはない線。切断された跡。あの時も、今と同じような顔をしていた。俺が死んだ時 もこんな顔をしているのだろうか?おそらく、そうなのであろう。無意識に、自分の喉元に手を当てていた。俺 の首には2本の線が入っている。決して消えない、2本の線が。
 本人の命を奪った致命傷は、どんな酷い怪我でも完璧に治す「全癒」でさえその跡を消すことは出来ない。一 説によると、魂が身体から抜け出る際に残す跡だという。魂が名残を惜しんでしがみついた爪痕。
 生は苦しみの連続なのかも知れないが、それでも続けなくてはならない。その意味を見い出して いる限りは。
 フローマーの胸の、エルフ銀の鎖帷子を両手で開いて、傷口からそっと心臓を戻す。その傷の上に、灰の中か ら回収した手裏剣を載せた。きっと地上まで彼女の心臓を守ってくれるだろう。指先で、彼女の色の失せた唇か らこぼれた血をぬぐった。身体の下に手を回し、抱えあげる。
 気のせいか、フロウもほっとしたような顔になっていた。彼女にとっての本当の心配事は、これからなのだが 。
 皆のところへ戻ると、アルが木製の大きな箱を前に難しい顔をしている。
「無理して、開けることはないよ」
 静かに、シウが言った。アルのかたわらには、シレノの遺体が横たわっている。今の精神状態では、彼女の仕 事は難しいだろうことは想像出来る。
「アル」
 糸に引かれたかのように、アルがこちらを向く。その眼には深刻な苦悩がある。自分の役割に対する自信と、 そして不安。どんなに前衛が魔物を打ち倒そうと、後衛が魔法で焼き尽くそうと、盗賊なしでは戦利品を得るこ とは出来ない。そのために、彼女はここにいる。ここにいるのだが。
「今すぐ、帰ろう。シレノも帰りたがっている」
 知らずのうちに、フローマーを抱く手に力が入っていた。冷たい、無力な感触。
「そう……だな」
 あっさりと、アルは認めた。認めてくれた。だからこそ、ここまで生きのびてこられたのだろう。出来る事と 出来ない事の区別をつけることを。それは別に、彼女に限ったことではなかったが。
「帰還する。先頭はシウ、続いてヴォイス、フローマー、アル、シレノス。最後尾はユーナとする 」
 ユーナでさえ、小言ひとつ言わなかった。
 転移陣に入る前に、俺は振り返る。
 残ったものは灰、血、服のきれはし。それから、壊れた武器。そして、鍵のかかったままの宝の 箱。
「火口の光、夜焦がす炎。集いて踊れ、しばしの宴」
 フローマーを抱えたまま、掌だけを闇に向ける。その「火球(マハリト)」が、残った灰の山を一掃する。舞 い上った灰が、生者も死者も等しく汚す。
(もう、退屈することもあるまい)
 そのまま、転送陣に踏み込む。なじみの、奇妙な浮遊感に身を委ねる。ここでは全ての重さが消失する。広げ た鳥の羽根のように虚空に浮かんだフローマーの長い髪。それが血と埃に加えて灰で汚れているのを見て、彼女 は怒るだろうかと思った。
 俺達は地上(うえ)に戻る。シレノの命を取り戻すために。そしてフローマーの身体に、新たな傷跡を刻むた めに。

ACT VI.城壁

 今宵は満月。
 安宿の窓から覗くリルガミンの城壁が、死人の肌のような色あいで、眼上にそびえていた。
 俺は寝がえりをうった。背後の感触を楽しむために。
 フローマー・ヴェレッタは熟睡していた。その裸の胸の真中に、かすかな、しかし大きな傷跡がある。その傷 跡にそっと指を触れると、滑らかな感触とは裏腹に、針で刺されたように心が痛んだ。
 そんな俺の無為な感慨をたしなめるかのように、フローマーは何事かつぶやきながら、白い腕をからめて来る 。
 集合は明日正午。いつもの広場。
 俺達はまた、迷宮(した)に潜る。全員の喝きが癒されるまで。あるいは、一人残らず骸と成り果てる日まで 。

            -終-

Updated September 11th, 2013 at 02:11 PM by Ossan99

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Comments

Page 1 of 2 12 LastLast
  1. Spinach's Avatar
    The Japanese language, it scares and confuses me.
  2. Ossan99's Avatar
    Rune reader will help you.
    Updated September 12th, 2013 at 03:11 AM by Ossan99
  3. LoyaltL's Avatar
    This is like the Matrix.
  4. Strife ❤️'s Avatar
    Quote Originally Posted by Ossan99
    Rune leader will help you.
    Mcjon, sharpshooter of japanese, rune leader?
  5. Ossan99's Avatar
    AmADo VII and Reiu are rune reader. I'm not sure about mcjon. My guess is he can read, but this is my guess.
  6. In-N-Out Double-Double & Animal Fries's Avatar
    the date should be should be 2001, not 2011
  7. Kelnish's Avatar
    then it wouldn't be 9/11, stupid
  8. In-N-Out Double-Double & Animal Fries's Avatar
    Noh
  9. I3uster's Avatar
    Quote Originally Posted by Ossan99
    AmADo VII and Reiu are rune reader. I'm not sure about mcjon. My guess is he can read, but this is my guess.
    He can't, he just marks them in red for his friends to translate.
  10. SeiKeo's Avatar
    well then how does he always manage to mark the right ones
  11. In-N-Out Double-Double & Animal Fries's Avatar
    Witchcraft
  12. Ossan99's Avatar
    Corrected from 2011 to 2001.
    Updated September 12th, 2013 at 03:12 AM by Ossan99
  13. Ossan99's Avatar
    @All
    Do you have any complaint, I can support with Japanese style.
  14. LoyaltL's Avatar
    @Ossan -
    So if some member pisses me off, you'll deal with him 'Japanese style'? ._.
    Samurai?
  15. Ossan99's Avatar
    @Layoal
    No,no. Japanese style means Japanese Hospitality.
    http://www.youtube.com/watch?v=9B2XIBHvRbI
  16. ItsaRandomUsername's Avatar
    *here is a moment of silence and remembrance for all those lost*
  17. LoyaltL's Avatar
    "Layoal"....? ._.

    That's new.
  18. Ossan99's Avatar
    @Loyal
    I'm sorry, that was my typo.
  19. Dark Pulse's Avatar
    Quote Originally Posted by Loyal-to-Lelouch
    "Layoal"....? ._.

    That's new.
    You also realize English isn't Ossan99's native language, right?
  20. LoyaltL's Avatar
    I wasn't really blaming him or anything at all. O_o

    It's really interesting to see the various 'forms' of my un.
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